フェルメール「牛乳を注ぐ女」とオランダ風俗画展

その日はいつもの倍のペースで仕事をこなし、定時とともに会社を飛び出しました。
はやる気持ちを抑えながら六本木へ向かい、国立新美術館で開催されている「フェルメール「牛乳を注ぐ女」とオランダ風俗画展」を観てきました。
「牛乳を注ぐ女」は現存するヨハネス・フェルメールの作品30数点の中でも、傑作中の傑作として特に評価の高い作品です。
私にとって、念願がかなった一日となりました。

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作品自体は意外に小さく、また鑑賞スペースと作品との距離がとられていたため、細部を観るためにオペラグラスを使用している方々がいました。
照明の影響かもしれませんが、画集でみていたよりも実際の作品はずっと明るく、ラピスラズリの青(フェルメール・ブルーと呼ばれる)はとても鮮やかでした。

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この「牛乳を注ぐ女」もそうですが、フェルメールの作品はそのほとんどが風俗画です。
決してドラマチックでも華やかでもない、日常に潜む一瞬を描いています。
素朴でとても静かな瞬間を。
しかし、この作品は圧倒的な存在感で鑑賞者を魅了して離しません。
女性がまとっている黄色と赤の衣装とフェルメール・ブルーのエプロンとのコントラスト、質感を表現するために点綴法で描かれたパン、注がれる一筋のミルク。
同じ17世紀のオランダ人画家であるレンブラントの光の使い方とはまた違い、窓から差し込むやわらかな光が、対象物をやさしく照らします。

フェルメールは、綿密な計算をして描いた画家だと言われています。
キャンバスの一部にピンをうち、そこを消失点として紐を繋ぎ、正確な遠近法を用いて描いていることが近年のX線調査により分かっています。
しかし、すべてを正確に描くことに固執していたのではなく、たとえばテーブルは台形に描かれていることからも分かるように、フェルメールは作品をどうみせるかということに細心の注意を払っていたのです。

フェルメールは、オランダのデルフトという町で生涯を過ごし、オランダ人の日常を静かに見つめ、丁寧に描き続けた画家でした。
「牛乳を注ぐ女」からは、美しさだけではない、画家の芸術家というよりはむしろ職人気質のような強いひたむきさまでも伝わってきて、私は完全に魅了され、何度となく作品の元へと引き寄せられました。
金曜の夜でなかったら、次から次へと押し寄せてくる人に押され、ゆっくり鑑賞することもできなかったでしょう。
週末は大変な混雑だそうです。
この展覧会に行くなら、金曜の夜がおすすめです。(金曜日以外は18時閉館です)


フェルメール「牛乳を注ぐ女」とオランダ風俗画展
国立新美術館
2007年9月26日から2007年12月17日
http://milkmaid.jp/index.html

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